2020/07/14 21:31
1)まずは素材の話から
私たちが取り組むものづくりやサービスにおいては、なによりまず最初に素材について徹底的に話し合いをします。
素材を目の前にしてこれが好き、こういうところが好き、こんな感じの使い方しているのを見ていいと思った、といった話をたくさんするだけで、自動的に好みや趣味を作り手にとても反映させやすく、それと同時にお客様にもその素材についてのいいところ悪いところ、価格などが整理してお伝えできるのでとても効果的なリスクマネジメントになります。
素材というのは後々特にクレームに繋がりやすい部分で、一般にはそのリスクを避けるあまり、素材の魅力よりもデメリットを避けることを第一とした使い方がほとんどだと思います。ですがはじめに素材についてよく話し合いをすることで、あるデメリット受け入れる選択が出来た場合、一気に魅力的なデザインの可能性が広がったりすることはよくあります。というのも概ね魅力的な素材は結構弱点や問題点もしっかり持っている場合がほとんどだからです。
そしてなにより私たちが素材の話をするのが楽しくて仕方がないというのがあります。もともと長く木材を扱ってきたせいもあり、その魅力や様々な個性を伝えたくて仕方がないというのが背景にあります。私たちは皆様にこれが本当に自分の好きなもの、好きな建物、好きな風景だと言って納得してもらえるよう、素材をとおしてモノづくりに寄り添いたいと考えています。

2)価格にしばられないものづくり
私たちが言う価格に縛られないというのは、とりわけ価格勝負で安く作れるというわけではなく、予算がある中でより自由にモノや商品を提供できるということです。
モノを作ろうと思うと予想以上に多くの人や会社が関わっているものです。そしてほとんどの場合、それらの人や会社はそのプロセスの中で前後にだけ繋がりを持っているので、要求が少しでも細かくなったり、選択肢が増えるほど、伝言ゲームのようにどんどん齟齬が増え、それを補うためのコストも一気に増大するような仕組みが背景にあります。ですので基本的には予算が決まればそれに見合うだけの決まりきった選択肢を伝言ゲームで伝えていくようにモノづくりが行われ、そういったことの繰り返しが、その部分部分で最適化されていくことで、より一層自由度が無くなっていくことがほとんどです。木材などの自然素材特有の多様性があるものの場合、同じようにわかりやすい選択肢に押し込めようとすると、どうしても魅力的な素材使いが出来なかったり、高コストなものになったり、あるいはそもそも選択肢にすら入れないことがほとんどではないかと思います。
それに対し、私たちはコンストラクションマネージャーという立場をとることで、モノづくりに関わる全ての人と密で対等な関係をとり、長年の木材取扱事業者として自然素材の取り扱いについての経験を活かすことで、限られた予算の中で、より踏み込んだ提案や自由で楽しめるモノづくりに貢献することができ
ます。
3)きもちがいい木づかい
木材は自然素材の代表的な存在として歓迎されている印象がありますが、実はモノづくりの現場においては意外と嫌厭されがちです。
というのも、無垢の木材は魅力的ではありますが、とても癖の強い素材で、、それゆえ最初にしっかりと素材についてよく理解し、どのような使い方をするかについて合意形成をしておかないと、どんなに木が好きで使いたいという要望があったとしても、リスクを避けるために、木材を使うことをなるべく避けようとしてしまいます。私たちは最初に素材使いについて深く合意形成をすることで、あえて癖の強い木材というものを、大いに提案していきたいと考えています。癖の強い材料というのはその癖を受け入れた上で使うと、他とは全く違った個性を手に入れることが出来ますし、何よりもそれを使う人に、大きな満足感や強い愛着を感じさせるということを私たち自身が何度も経験してきたからです。
また私たちは使う木材がどういうものか、どのように使うのかということに加えて、その材料がどのように生産されているのかということについても知っておくことはとても有効なことだと考えています。
そういった素性というのは、時には見た目の美しさを超えてそれを使うものに訴えかけてくる場合があります。例えば家を建てる木を探している場合、自分と同じ年の木材であったり、自分の故郷の山の木だったり、あるいは建物を建てる土地にもともと立っていた木であったりするだけで、見た目があまりよくない木であっても、愛着がうまれてきたりするものですし、むしろ見た目のきれいな高級な材料をただ単純に並べるより遙かに価値を感じられることもあるのではないでしょうか。
私たちはこれまでの経験と様々な木材事業者とのつながりを活かして、一般的な木材流通に加えより素性が知ることのできる、山や製材所、市場といったところと協力しながら皆様に、たくさんの木に囲まれた豊かな暮らしを提案していきたいと考えています。